2024.8.5

江戸時代には東海道の宿場だった品川宿ですが、明治以降は近代化の中で、多くの工場が造られたところでもあります。

明治20年の品川宿周辺
国土地理院旧版地図より作成
上記地図の一部 品川宿西方の工場地帯

ガラス、ビール、医薬品、そしてレンガなど、日本の近代化に寄与した多くの物資が、品川周辺の工場で生産されていました。

それらの工場の中には、今も存続している会社がいくつもあります。

例えば上の地図に乗っている「製薬工場」は第一三共ヘルスケア、「白煉瓦製造所」は耐火製品総合メーカーの品川リフラクトリーズです。

さて、この品川白煉瓦製造所(現品川リフラクトリーズ)、最初は明治になって多く使われるようになったガス灯用のガスを生産するための、耐火レンガを製造する工場でした。
明治8年(1875)に伊勢勝こと西村勝三が品川で創業し、深川への移転を経て明治20年に品川に工場を移して稼働していました。
※屋号の伊勢屋勝三から「伊勢勝」です。

耐火レンガから始まった品川白煉瓦製造所ですが、やがて建築用の装飾レンガも生産するようになりました。
たとえば大正3年(1914)に竣工した東京駅丸の内駅舎の外壁を覆っている化粧レンガは、この品川白煉瓦製造所で生産されたものでした。

おそらくこの品川白煉瓦製造所で建築用レンガを生産していたことに加えて、品川駅西方にできた工場群の建物や塀がレンガで造られていたことなどから、品川宿の人たちにとってもレンガは親和性のある建材だったのでしょう。
品川宿には明治20年ころまで使われていたフランス積み、それ以降から昭和初期まで使われていたイギリス積みという古い技法で積まれたレンガ構造物がたくさん残されているのです。

フランス積み 各列が短い面と長い面が交互に並ぶ積み方
イギリス積み 短い面だけの列と長い面だけの列が交互に並ぶ積み方

たとえば・・・

まずは観光協会でも教えてくれる有名なところから

正徳寺の塀

なぜか古い積み方であるフランス積みのレンガが、それ以降の積み方であるイギリス積みのレンガの上に乗っています。

天竜寺の塀

イギリス積みです。

ここからはちょっとマニアックにレンガ構造物を探します。

お寺の境内にあるレンガ塀

レンガ造りの石仏堂

お寺の本堂がレンガ造り

そのお寺の裏の住宅地で見つけたレンガ塀

路地の井戸の流し口がレンガ

レンガ造りの石地蔵堂

ビルとビルの隙間に見つけたレンガ塀

家屋の土台にも使われているレンガ

後半についてはわざと所在地を載せていませんので、是非品川宿を訪れて探してみてください!

これらの古いレンガを探すコツは簡単です。耳を澄ませばよいのです。
レンガの方から「ここだよ~、ここだよ~♪」と呼ぶ声が、細い路地の奥やビルの隙間から聞こえてくるのです。

新たなマンション建設などですでに壊されてしまったレンガ構造物もあるのですが、探せばまだまだ見つかるものと思われます。

ところで品川白煉瓦製造所を創業した事業家の西村勝三ですが、品川宿の東海寺にお墓があります。

東海寺大山墓地にある西村勝三の墓

西村勝三は多くの会社を設立しました。うまくいかずに潰れてしまった会社も多いのですが、品川リフラクトリーズのように現在も存続している会社もあります。

有名なところではリーガルシューズ。
外国の靴メーカーかと思ったら、西村勝三が築地で創業した日本最初の靴工場、伊勢勝製靴場が起源なのです。

 

(歩き旅応援舎代表 岡本永義)

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