2024.8.10

大森は東海道の品川宿と川崎宿との間にあった立場だった場所です。
立場とは街道沿いの茶屋などがある場所で、旅人たちの休憩スポットでした。
規模の大きなものは「間宿(あいのしゅく)」とも呼ばれていました。

立場だった大森の町

立場の跡地である大森は、現在でもかつての東海道の道幅そのまま、両側に商店が並んでいます。

大森立場の名物は、麦わら細工と和中散でした。

麦わら細工は、産物が少なかった鈴ヶ森から六郷にかけての農民たちに、農業の合間に作り土産品として売るように、大林寺の住職が教えたものだといわれています。

「東海道名所図会」の挿絵より 麦わら細工を売る店
国立国会図書館デジタルコレクションより(以下同じ)

子供の玩具として、東海道の土産物として人気があったそうですが、現在では一般的には売られていません。

和中散は腹痛などによく効くといわれていた道中薬です。
大森にあった和中散販売所の跡地は、現在は医院が入ったビルになっています。

和中散販売所の跡

和中散は大森で作られていた薬ではなく、東海道を京都側にずっとずっと進んだところにある石部宿と草津宿の間、梅の木立場で作られていました。

和中散を製造していた大角家(正確には下に飛び出す角)の江戸時代に建てらた店舗兼家屋が残っています。

梅の木立場の旧和中散本舗

江戸時代前期ころに建てられたもので、国の重要文化財に指定されています。
ところで、和中散はこの大角家、屋号が「是斉」の秘伝の薬だったのですが、和中散が売れるのを見た梅の木立場の周囲の家でも類似品を作って売るようになり、多いときで5~6軒もの「和中散」の製造所が梅の木立場に並び立ったそうです。

大森で売られていた和中散が大角家のものだったのか、類似品だったのかは、残念ながらわかりません。

ところで大森は海苔の産地でもありました。
「東海道名所図会」には、大森沖での海苔の養殖や簀にに張って乾燥させている様子が載っています。

「東海道名所図会」の挿絵より 海苔の養殖
「東海道名所図会」の挿絵より 簀に張った海苔を干す様子
上2枚はいずれも国立国会図書館デジタルコレクションより

現在は大森で海苔の生産はしていませんが、大森の東海道沿いには多くの海苔問屋があり、店頭で小売りもしています。

私のおすすめは、海苔問屋の川良さんで売っている「スナックのり バター風味」。
バター味の味付け海苔ですが、これがご飯にもビールにも合うのです!

スナックのりバター風味とおむすび用の海苔

また和菓子屋さんの大黒屋さんでは、海苔を練りこんだ大福餅を売っています。

のり大福

やわらかい大福餅に海苔の風味がしてたいへんおいしいです。
時間がたつと固くなるので、食べ歩きがおすすめです。

東海道の小石

大黒屋さんでは「東海道の小石」というラスクもおすすめです。
歩いていて小腹が空いたときなどに最適です。

また、大森に享保元年(1716)から店を開いているという和菓子店餅甚は、東海道府中宿郊外の安倍川のほとりに住んでいた甚三郎が大森の立場で始めた茶屋が始まりというお店。
安倍川の渡し場の名物といえば安倍川餅。そこで、大森でも「あべ川餅」を売っています。

あべ川餅

ふわふわもちもちのお餅に黄粉と黒蜜をかけていただきます。
これもまたおいしい!

大森へは、かばんに余裕をもたせて行きましょう!

  

(歩き旅応援舎代表 岡本永義)

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