小田原にも大仏様があるのを知っていますか?
「丈六仏」と呼ばれる大きさで立ったときの背の高さが一丈六尺、つまり約4.8メートルになる地蔵菩薩像です。
場所は小田原宿にある徳常院という曹洞宗の寺院内です。
でもお地蔵さまの大仏が、ここに来たのは明治になってから。
もともとは箱根の芦ノ湖とのほとりにあったのです。
江戸時代の浮世絵にも描かれています。
この付近は現在の元箱根にあたります。
ちょうど東海道が足湖畔に出る付近です。
江戸時代までの芦ノ湖畔には、箱根権現(現箱根神社)の塔頭寺院と多くの仏像や石塔が並んでおり、「賽の河原」と呼ばれていました。
仏教の教えでは三途の川のほとりが賽の河原です。
地獄の入口を意味することもあります。
地蔵菩薩は地獄で苦しむ人たちを救済する仏様とされていて、箱根は地蔵信仰の霊場だったのです。
ところが明治初年の廃仏毀釈の中で、これらの箱根権現の塔頭寺院のほとんどは破壊されてしまい、仏像や石塔は破壊されたり湖に投げ込まれてしまいました。
そのため現在の賽の河原は、残された少数の石塔などが小さな敷地に並んでいるだけになっています。
小田原の徳常院にある地蔵菩薩像も、もともとはこの賽の河原にありました。
地蔵像は2体あったのですが、そのうちの大きな方が現在は徳常院にある地蔵菩薩像です。
箱根権現は神仏習合の宗教施設でしたので、明治初年に廃仏毀釈によって仏教要素をもつものが徹底的に破壊されてしまいました。
小さい方の地蔵菩薩像は破壊されて湖に投げ込まれ、あるいはただの金属として売却されたといわれています。
大きい方の青銅製の地蔵菩薩像は後背が破壊されて金属として売却され、のこった本体部分も金物商に売られてしまいました。
地蔵菩薩像は買い取った金物商によって箱根の山から下ろされました。
そして小田原の浜まで運んだところ、ここで突然地蔵菩薩像が動かなくなってしまったというのです。
地蔵菩薩像を運んでいる最中に突然動かなくなった話はあちこちに残っていて、これらの伝承が何を意味するのかは現在調査中です。
動かなくなった地蔵菩薩像はそこに放置されたのですが、廃仏毀釈までは地蔵信仰の聖地だった箱根に小田原は近く、小田原の住人たちは地蔵菩薩像の前に樽を置いたところ、多くのお賽銭が集まったそうです。
そこでその浄財を使って地蔵菩薩像は徳常院に安置されたそうです。
動かなかったお地蔵さまが
金の力で動いた?!
本当のところは、金物商が地蔵菩薩像を箱根の山から小田原の町まで下ろしたところ、いまだ地蔵信仰があつかった小田原の人々によって買い取られ、徳常院に安置されるようになったのでしょう。
徳常院に安息の場を得た地蔵菩薩像ですが、後背の付け根には今も修繕の跡が残ります。
明治初年の狂気ともいわれる廃仏毀釈、この大仏様がその物語を伝えています。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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