箱根西坂には五ヶ新田と呼ばれる5箇所の村がありましたが、そのもっとも西にあたる塚原新田のはずれに箱根路の碑があります。
東海道五十三次を日本橋から京都に向かった場合、この碑を見ると箱根の坂が一段落した気になります。
ただ、実は箱根の坂はこれで終わりではなく、この先に最後の坂である愛宕坂と今井坂があります。
箱根路の碑とそれにつづいて三島塚原ICの交差点を過ぎると、国道をはさんで大きな松の木が並んでいます。
初音が原の松並木です。
ここは古来からウグイスの名所だったらしく、寛政時代(1789~1801)ころに編纂された「豆州志稿」には古書の引用として「源頼朝ここにて鶯の初音を聞きしより名付く」と書かれていますので、すくなくとも江戸時代の後期には初音が原と呼ばれていたことがわかります。
この松並木は約1キロにわたって松の木がつづいています。
これまでにも茅ヶ崎や大磯宿から小田原宿への間などに松並木がありましたが、ここまで長く、そしてその間途切れることなくつづいている松並木は、東海道五十三次の旅の中で初めてです。
さらにこの松並木の中には、一里塚が現存しています。
箱根畑宿の一里塚は復原されたものですから、両側ともに江戸時代から残っている一里塚は横浜市戸塚区にあった品濃一里塚以来です。
錦田の一里塚の2つの塚の間には、国道1号線が通っています。
東海道に現存する一里塚の中では、塚と塚との距離が広い方なのです。
塚に植えられている木は、今は両方とも榎のようですが、天保14年(1843)ころ編纂された「東海道宿村大概帳」では、「左榎 右松」と書かれています。
いずれにせよ今の木はあまり古い木には見えないので、植え替えられたものなのでしょう。
この一里塚は大正11年(1922)に「錦田一里塚」としていったん国の史跡に指定されましたが、その後昭和44年(1969)に小田原から三島の間の旧東海道の石畳や一里塚が「箱根旧街道」として国の史跡に指定されたときに、錦田一里塚も国指定史跡「箱根旧街道」に統合されました。
ところで、一里塚の名称を付けるときには、その一里塚がある場所の江戸時代の村の名前を付することが多いのですが、「錦田」というのは箱根西坂の五ヶ新田(山中村、笹原村、三ツ谷村、市山村、塚原村)を含む10ヶ村が合併して明治22年(1889)に錦田村が成立したときにできた地名です。
その意味では一里塚の命名としては珍しい例といえます。
長くつづく松並木と現状をよく留めている一里塚、箱根の坂をほとんど下ったところで、ここは東海道の旅気分が一気に上がる場所なのです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
最新のブログ記事
- 伊豆の国分寺と国分尼寺 三島にあった官寺の跡江戸時代に東海道五十三次の一つ、三島宿が設けられた三島は、伊豆国の国府があった場所で、奈良時代には国分寺と国分尼寺が築かれました。その2つの寺の跡の伝承と現実を訪ねます。
- 本陣の門 三島宿で移築された本陣建造物東海道11番目の宿場、三島には2軒の本陣がありました。それら本陣の門は、三島宿内に移築されて残っています。
- 桑名の焼きハマグリ ブラタモリ「桑名で食べて伊勢参り」は本当か?「その手は桑名の焼きハマグリ」 よく聞くせりふですが、ここに出て「桑名の焼きハマグリ」とはどのようなものなのでしょうか?
- 沼波弄山 江戸でも売られていた萬古焼の始祖かつては湊町だった桑名宿に、沼波弄山という廻船問屋がいました。この沼波弄山が趣味で作り始めた陶器が、現在は四日市の地場産業となっています。
- 伊勢神宮の鳥居 東海道でリサイクルされている鳥居とは?東海道も伊勢国(三重県)に入ると、あちらこちらに伊勢神宮の影響が見えてきます。ところどころに設置された鳥居もそのひとつです。それらの鳥居の中にはリサイクルされているものもありまして・・・
東海道歩き旅イベント 参加者募集中
とにかく内容が濃く詳しい、それなのに参加費がリーズナブル。
それが歩き旅応援舎の東海道歩き旅イベントです。
「日帰りで歩く東海道」 日本橋~原宿を日帰りで歩きます。全15回
「京都まで歩く東海道」 原宿~三条大橋を一泊二日で歩きます。全18回
それぞれ月に1回ずつ歩いて、東京の日本橋から京都の三条大橋をめざすイベントです。
以下のイベントが参加者募集中です。途中からでもご参加いただけます。
このブログには書いていないことが、実際の東海道にはいっぱいあります。
もっとくわしくお話をしながらガイドがご案内いたします。
一緒に東海道を歩きませんか?
人生の宝となるような経験、そのためのお手伝いをいたします。
- 日帰りであるく東海道 第2期 生麦~藤沢宿月に1回日帰りで歩く東海道五十三次の旅
開催日時
2025年
4月19日 生麦~保土ケ谷宿
5月24日 保土ケ谷宿~戸塚宿
6月21日 戸塚宿~藤沢宿
参加費 各回3500円 - 日帰りであるく東海道 第5期 元箱根~原宿月に1回日帰りで歩く東海道五十三次の旅
開催日時
2025年
2月22日 元箱根~山中城
3月22日 山中城~三島宿
4月26日 三島宿~原宿
参加費 各回3500円 - 日帰りであるく東海道 第1期 日本橋~生麦月に1回日帰りで歩く東海道五十三次の旅
開催日時
2025年
4月13日 日本橋~品川宿
5月11日 品川宿~蒲田
6月15日 蒲田~生麦
参加費 各回3500円 - 京都まであるく東海道 第10期 桑名宿~土山宿月に1回、一泊二日で歩く東海道五十三次の旅
開催日
2025年
4月5~6日 桑名宿~四日市宿
5月17~18日 四日市宿~亀山宿
6月7~8日 亀山宿~土山宿
参加費 各回6500円 - 京都まであるく東海道 第6期 原宿~岡部宿月に1回、一泊二日で歩く東海道五十三次の旅
開催日
2025年
10月25~26日 原宿~蒲原宿
11月22~23日 蒲原宿~東静岡
12月27~28日 東静岡~岡部宿
参加費 各回5000円