東海道五十三次のうち42番目の宿場である桑名宿は、湊のある町でした。
揖斐川の河口に設けられた湊には、多くの商業船が出入りしていました。
その様子は上の浮世絵にも描かれています。
今でこそ港とはいえない状態になりましたが、東海道熱田宿(宮宿)との間を海路で結んでいた七里の渡し場の跡が新たに築かれた堤防の内側に残っています。
かつては廻船問屋が並んでいた町も、今は住宅地になっています。
その住宅地の一画に、このような表示があります。
沼波弄山とは江戸時代中期の桑名宿の人で、廻船問屋を営む豪商だったそうです。
この沼波弄山が作った陶器が、萬古焼の始まりとされています。
これが江戸時代後期に森有節によって作られた萬古焼です。
森有節は沼波弄山の萬古焼を復興させた人物で、弄山が窯を設けたのと同じ場所に窯を開いて萬古焼を製作していました。
いまでは萬古焼は桑名よりもお隣の四日市の方が有名になりました。
でも始まりは弄山の趣味の茶の湯が高じて、自分で茶器を作るようになったことだったのです。
桑名市と四日市市にはさまれた朝日町に小向というところがあります。
この小向で弄山は窯を開き、陶器を焼いていました。
弄山の窯の跡は正確にはわからないのですが、小向は窯を設けるのにに適した斜面の多いところで、この斜面からも古い窯の跡が見つかっています。
萬古焼の名は、桑名宿にあった沼波弄山の廻船問屋の屋号「萬古屋」からきています。
桑名宿には弄山のお墓もあります。
茶器から始まった萬古焼ですが現在では土鍋が主流で、四日市産の萬古焼の土鍋は国内のシェアの7~8割を占めています。
実は弄山が始めた萬古焼、江戸でも販売されていました。
江戸名所図会の「今川橋」の挿絵を見ると、「此辺瀬戸物屋多し」と書かれていて、今川橋の周囲で壺のようなものが売られています。
今川橋の周囲には陶器を売る店が多かったのですが、ここに弄山は自作の陶器「萬古焼」を売る店を開いたのだそうです。
四日市宿にある萬古焼の展示、販売施設である「ばんこの里会館」は、2階が萬古焼の販売所になっています。
「たかが陶器」と思われるかもしれませんが、多種多様で用途もそれぞれの陶器が並んでいるのは、見ているだけでも楽しいです。
東海道をあるいて四日市宿に到達したら、ぜひ寄ってみてください。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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