東海道は10か国を通っています。
東から順に、武蔵、相模、伊豆、駿河、遠江、三河、尾張、伊勢、近江、そして京都のある山城の10か国です。
そのうち11番目の宿場のある三島は、伊豆国にあたります。
しかも伊豆国の国府があった場所なのです。
残念ながら国府の役所である国庁(国衙)が三島のどこにあったのかは判明していませんが、伊豆の一の宮は三嶋大社ですし、国分寺の跡地もわかっています。
国分寺とは奈良時代に聖武天皇によって各国に建てられた官寺のことです。
奈良の大仏を建てたと同時に、聖武天皇は日本の各国に国分寺と国分尼寺の建設を命じたのです。
それぞれの寺には、本堂にあたる金堂、それに講堂、七重塔が建てられていました。
ところで三島には蓮行寺というお寺がありました。
三島宿の少し西側にあたります。
この蓮行寺の墓地の中には大きな石が8つあり、人の手によったかのように整然とならんでいました。
そのため三島では、この石は国分寺の礎石だったものと言い伝えられており、昭和30年に発掘調査が行われました。
その結果、蓮行寺の境内とその北側一帯から国分寺の跡が発見され、境内にあった石は国分寺の七重塔の礎石と判明したのです。
ところで蓮行寺は、この発掘調査に先立って、それまでの噂に基づいて寺の名称を「伊豆国分寺」と変更していました。
もし調査の結果として国分寺じゃなかったら恥ずかしいところでしたが、発掘調査の結果、無事に国分寺の跡地を判明して、めでたしめでたしとなったのです。
一方で伊豆国の国分尼寺ですが、こちらは間違えて別の場所に碑が建てられてしまっています。
三嶋大社の前から南に向かう下田街道沿いにこの碑はあります。
かつて下田街道の真ん中に、国分寺の七重塔の礎石と同じような大きな石があったそうです。
かつて下田街道沿いに大きなお寺があったことは明らかで、市ヶ原廃寺と呼ばれていました。
この市ヶ原廃寺が国分尼寺ではないかと思われていたのです。
ところが昭和28年に始まった発掘調査の結果、この市ヶ原廃寺は国分尼寺よりも前の白鳳時代に建設された大興寺というお寺の跡だと判明しました。
せっかく碑まで建てたのに、国分尼寺ではなかったのです。
この市ヶ原廃寺の礎石は、現在は祐泉寺の境内に移されています。
三島は廃寺となった古代の大寺院が多く、もしかしたら国分尼寺だったかもしれない大寺院の跡も発掘されているのですが、決め手になるものはなく国分尼寺の場所については明確になっていません。
「古事記」や「日本書紀」にもその存在を示す記述のある東海道ですが、古代からある東海道は、かつての国府をむずぶ道とも考えられます。
三島宿の周辺にもその痕跡が残っているのです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
【参照文献】
静岡県史蹟名勝天然紀念物調査報告第1巻
三島市誌上巻
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