小夜中山峠の東海道を歩いていると、北に「茶」の文字が書かれた山が見えます。

粟ヶ岳です。
東海道の名所図会の挿絵には「無間山」と描かれています。


そこへ昭和7年(1932)にヒノキを「茶」の字に植えたのです。
粟ヶ岳の別名「無間山」にも関わるのですが、ここには無間の鐘という伝説があります。
かつてこの山の頂上に観音寺がありました。
その寺の梵鐘を撞くと、現世で大金持ちになることができるのですが、死んだ後には無間地獄に堕ちるという鐘でした。
恐ろしい鐘ですがそれでも撞く人が列をなすほどに集まったため、ついに住職は鐘を井戸に沈めてしまいました。
これが粟ヶ岳に伝わる「無間の鐘」の伝説です。
無間の鐘があるから無間山だったのか、無間山という名前だから伝説が生まれたのかの前後関係ははっきりしませんが、山の名前が関わっていることは間違いなさそうです。
ところで、大金持ちになりたくて無間の鐘を撞きに行った人たちですが、やはり無間地獄に堕ちるのは怖かったようです。

そこで現れるのが小夜中山峠にある久延寺です。
ここの本尊の観音様にお参りをすると、無間地獄から救われるというのです。
どうも夜泣石の話と同じように久延寺が参拝客を集めるために作った話である気がしないでもないですが、別の話もあります。
小夜中山峠で旅人たちを襲う蛇身鳥という怪鳥を、京都から来た中将良政(三位良政とも)という武士が退治しました。
良政は供養のために梵鐘を造って奉納しましたが、鐘を鋳る材料の金属類の中に嫉妬妄執の激しい人が寄進した鏡があり、その念のため鏡は溶けないまま鐘になりました。
そこで撞くと無間地獄に落ちる鐘ができあがってしまったというものです。
鏡が溶けなかったらなぜ無間地獄? という謎が残りますし、話はこれで終わりなので全然救いがないのですが、小夜中山峠が絡んでいるところは共通しています。

「茶」の文字が見える山にはこのような恐ろしい伝説があったのです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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