山王小学校の前に、上杉神社と書かれた祠があります。

祠の中にはいくつもの五輪塔が置かれています。

この中の1つが上杉龍若丸の墓、それ以外のものはその家臣たちの墓と伝えられています。
「小田原市史」にはかつての写真とともに、もともとは露天だったものが覆屋が設けられたと記されています。
この墓の主とされる上杉龍若丸とは誰でしょう?
京都で応仁の乱が勃発するおよそ50年前から、関東は戦乱の時代に入っていました。
幕府の出張機関である鎌倉府の長官である鎌倉公方は、伊豆の韮山を拠点とする堀越公方と古河を拠点とする古河公方に分裂し、鎌倉公方を補佐するはずだった関東管領の上杉氏も山内家と扇谷家に分裂し、これらが関東の豪族たちを巻き込んでぐっちゃぐちゃの戦乱の時代となっていたのです。

そんなところへ西から伊勢宗瑞(いわゆる北条早雲)が攻めてきて、まず堀越公方が倒されました。
その孫の北条氏康は古河公方、山内上杉、扇谷上杉を打ち破り、北条が関東に覇を唱えるようになりました。
北条氏康によって関東を追われた山内家の上杉憲政は、越後の長尾景虎を頼って逃げていきましたが、その憲政の子供が龍若丸なのです。
龍若丸の詳細がわかる史料は少ないです。
いずれも江戸時代に書かれた「寛政町修諸家譜」「北条記」「関八州古戦録」などに記述があるほか、小田原市教育委員会が編纂した「小田原市史」にも「上杉龍若丸の墓」として五輪塔に関する記述があるだけです。
五輪塔が収められた上杉神社の祠には、龍若丸についてこのように書かれています。
「上杉龍若丸は憲政の使者として北条氏康のもとに赴いたところ、氏康によって捕らえられて殺されてしまった」


しかし、使者に行ったら殺されたと書かれているのは、私が知る限り上杉神社の掲示だけです。
上に挙げた江戸時代に書かれた書物には大同小異はあるものの、龍若丸は父の憲政が越後に逃げた後も平井城にいたところ、裏切った家臣たちによって北条氏康に引き渡されたと記されています。
上杉神社の掲示とは全然ちがう話が書かれているのです。
どの話が本当なのかは今となっては判然としませんが、上杉神社の掲示が歴史的事実と鵜呑みにしない方がよいのは確かです。

この付近には五輪塔や宝篋印塔などの石塔が多く、古い時代の埋葬地だったのではないかと「小田原市史」には書かれています。
龍若丸の墓と地元で伝わっている五輪塔も、本当に龍若丸の墓なのかどうかはわかりませんが、この付近が古い埋葬地だったことと関わりがあるのでしょう。
上杉龍若丸は殺されたとき、11歳だったとも13歳だったともいわれています。
いずれにせよ、10代前半の短い生涯だったようです。
ちなみに大河ドラマにも登場したことがあります。
平成19年(2007)の「風林火山」です。
演じていたのは、なんと令和8年大河ドラマ主演の仲野太賀さんでした。(当時14歳)
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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