
原宿の出身で、同所にある松蔭寺の住職だった白隠慧鶴禅師は、臨済宗中興の祖と呼ばれています。
臨済宗には14派があるのですが、全ての派において白隠禅師の法統を唱えています。

白隠禅師は逸話の多い人です。
本当かウソかわからない話が多数伝わっています。
子供の時には、一心不乱に題目を唱えれば火傷をしないと思い込み、焼け火箸を股に押し当てて大やけどをしたり
修行僧のときには托鉢に出た先で「うるさい!」と老婆にほうきで殴られて昏倒し、目が覚めたら師から与えられていた公案が解けていたり
故郷の原宿に戻り松蔭寺の住職となった後には、宿内で生まれた私生児の父として疑われ、赤子を育てるはめになったり
とにかく逸話の多い人です。
一番有名な逸話は、やはり「摺鉢の松」でしょう。


白隠禅師はすでに全国的に名が知られていて、東海道を参勤交代で通る大名たちも松蔭寺に立ち寄るようになっていたころの話です。
そのような状況だったにもかかわらず松蔭寺は貧しく、1つしかない摺鉢を誤って割ってしまっても新しいものを買うこともできない有様でした。
そのことを知った岡山藩主の池田継政は、高価な備前焼の摺鉢を白隠に贈りました。
ところが高価か廉価かということでものごとを計らない白隠禅師は、台風で幹が折れてしまった境内の松の木の傷口をふさぐために、この備前焼の摺鉢を使ってしまいました。
松は摺鉢を幹にかぶせられたまま成長し、ついには本堂の屋根よりも高い木となりました。
この「摺鉢の松」は白隠禅師の徳を顕すものとして、松蔭寺の名物となりました。
この話はあくまで逸話として伝承されているものです。
そのため本当かどうかもわかりませんし、摺鉢を贈られた年もわからない、伝わる話に多少のちがいがあるなど、はっきりしないところも多いです。
それなのに、伝承なのに、なぜか摺鉢の乗った松の木はちゃんとあるのですから不思議です。

残念ながら摺鉢の松は平成27年(2015)ころに枯れてしまいました。
切り倒された松の幹はしばらくは境内に置かれていたのですが、現在は輪切りにされたものが展示されています。

今の摺鉢の松は2代目です。
オリジナルの松よりも少し奥まったところにあります。


ついでの話になりますが、オリジナルの摺鉢の松には枯死するまで本当に摺鉢が乗っていました。
ところがこの摺鉢は実はレプリカで、本物はやはり貴重なものということで庫裡にしまわれていたのだそうです。
松の上の摺鉢がレプリカだったことについては、お寺の人に確認しましたので間違いありません。
現在の摺鉢の松は、松は2代目、摺鉢はレプリカです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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