東海道屈指の富士の名所といわれている薩埵峠です。
歌川広重も「東海道五拾三次之内 由井薩埵嶺」として峠から見える富士山を描いています。
私も薩埵峠には何度も登っていますが、富士山がいつも見えるとは限りません。
曇りの日や雨の日、午後になると富士山の方だけ雲が出ることもあり、きれいな富士山が見られるのは五分五分と言ったところでしょうか。
ところで、東海道には各所にヤマトタケルの伝説が残っています。
「古事記」「日本書紀」には、東征の途中でヤマトタケルが焼き討ちに遭う場面が描かれています。
なお、「古事記」では「倭建命」、「日本書紀」では「日本武尊」と表記されていますが、ここでは「ヤマトタケル」で統一します。
沼地の草原に誘い込まれたヤマトタケルは、周囲から火を放たれて窮地に陥ります。
そのときに腰の剣を抜いて周囲の草を薙ぎ払い、この危地を脱するのです。
このときヤマトタケルの命を救ったことから、この剣は「草薙剣」(くさなぎのつるぎ)と名付けられました。
このヤマトタケルの焼き討ちの地については様々な説があり、その代表格がJR東海道線に駅がある草薙や焼津です。
それ以外の場所のひとつとして、薩埵峠があるのです。
薩埵峠の東に倉沢という地名があります。
この地名由来は、ヤマトタケルが焼き討ちに遭い、乗馬の鞍が焼けて失われた、焼け去ったことから「鞍去り」→「倉沢」となったというのです。
東海道をあるいていると、倉沢に鞍佐里神社があります。
長い階段の上にある神社なのですが、この神社はもともと薩埵峠の東側の坂の途中にあったものが、時期の詳細は不明ながらこの地に遷座してきました。
現在の社殿が大正14年(1925)に建てられたものですので、明治か大正のころと考えられます。
神社名の「鞍佐里」は「鞍去り」から来ていると伝わり、祭神としてヤマトタケルが祀られています。
本殿の透かし彫りには、ヤマトタケルが剣を抜いて草を薙ぎ払っている様子が描かれています。
他にも薩埵峠にはヤマトタケルの伝承があります。
薩埵峠の駐車場から北側の道を下ると、「日本武尊遺跡」としてヤマトタケルが馬の足を洗ったと伝わる井戸(泉)の跡といわれるものがあります。
もうひとつ、「日本武尊駒の爪址」という石もあります。
見ての通りヤマトタケルの乗馬の蹄の跡がくっきりと残った石です。
ただし地元の人に聞いた話では、いつごろかは明らかでありませんが地元の青年団が名所を作るために石に彫ったものだとか。
碑の裏面には「昭和五十五年一月 興津地区老人クラブ連合会」と刻まれていますので、それ以前のこととなるのでしょう。
さて、真相はいかに???
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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