6月18日の「京都まであるく東海道」では鈴鹿峠を越えます。
鈴鹿峠は標高380メートル、三重県(伊勢国)と滋賀県(近江国)の境となっています。麓である関宿との標高差は約285メートル、箱根湯本との標高差が約800メートルだった箱根峠と比べると、たいしたことはありません。本当です。
しかし、鈴鹿峠は古来より箱根峠と並ぶ東海道の二大難所といわれてきました。それは鈴鹿峠には山賊が出ることが多かったためです。現在では山賊はいませんが、その代わりヤマビルが出ます。
以下はヤマビル対策についての注意事項です。
1 最重要:ヤマビルは無害!
ヤマビルは血を吸います。しかし、痛くもかゆくもありません。病気を媒介することもありません。血を吸うにしてもほんの少量で、健康に害の出るほどではありません。つまりヤマビルは無害です。必要以上に怖がってはいけません。
むしろヤマビルを怖れるあまり、山中でパニックを起こしてしまうと、かえって滑落などの重大事故につながりかねません。
「ヤマビルは無害」
一番大事なことですので、肝に銘じておいてください。
2 ヤマビルの特性
ヤマビルは湿った環境を好みます。雨天や雨上がりを好み、湿った落ち葉の下に身を潜めています。
そして動物や人が通ると、その震動や二酸化炭素を関知して活動を開始します。そのため、先頭の人よりも後ろを歩いている人の方が血を吸われやすい傾向があります。
ヤマビルは地面から靴にとりつき、そのまま上に登り、ズボンの裾から中に入り、靴下が途切れるところに吸い付いて血を吸うことが多いです。
稀にズボンの上から服を這い上がって、首に吸い付くこともあります。
木から降ってきて首に吸い付くというのは巷説のようで、樹上にいるところが確認されたことはありませんし、研究者による実験でも上から降ってきたことはないそうです。
ヤマビルはいったん吸い付くと、数十分から1時間程度血を吸い続けます。このとき痛みや痒みはほとんどありません。こうしてお腹いっぱいになると、勝手に取れて地面に落ちます。
だから気付いたときには足に小さな丸い傷があり、そこから血が流れている状態です。
なお、ヤマビルは足で踏んだくらいでは死にません。殺すことは諦めてください。
3 ヤマビル対策の服装
ヤマビルに血を吸われても無害とは言っても、吸い付かれた跡は血まみれになりますし、なにより気持ちが悪いです。ヤマビルに吸い付かれるのを防ごうと思ったら、足下が重要となります。
まず大前提として、足首部分の素肌が露出する服装は避けてください。スカートや短めのパンツはNGです。靴下も最低でも脛まであるものを履いてください。また、目の細かいストッキングの上からはヤマビルは肌に吸い付くことができないので、履いておくと効果があるそうです。
それでもヤマビルは靴下とズボンの間から入り込んできます。
そこで、登山用のスパッツを着用するとある程度の予防になります。
本来は靴の中に土や落ち葉が入るのを防いだり、汚れや怪我から足を守るためのものですが、ズボンの裾の隙間を塞ぎますのでヤマビル対策としても使えます。
ただし、スパッツはけっこう高価です。たった一度鈴鹿峠を越えるだけのために買うのはもったいないです。
そこでスパッツをお持ちでない方は、100円ショップなどで売っているマジックバンドで代用できます。マジックバンドで、ズボンの裾を締めて隙間をなくしてください。
ただしこれらの方法は、いずれも完全ではありません。ヤマビルにも根性のあるやつはいまして、そいつらはほんのわずかな隙間や靴下の編み目からでも入り込んで足に吸い付きます。そこで役に立つのがヤマビル除け薬剤です。
4 ヤマビル除け薬剤
もっともポピュラーなものは「ヒル下がりのジョニー」というファンキーな名称の薬剤です。主成分は天然アルコールで、その臭いと刺激でヒルを寄せ付けないものです。
ほぼ100%ヒルの被害を防止できます。
使用法は、靴の外側にスプレーするだけ。
ただしボトル1本が1回で使い切れる量ではなく、これもけっこうなお値段がするため、みなさま各自で購入する必要はありません。私の方で用意いたします。鈴鹿峠に入る直前に、ご希望のみなさまの靴にスプレーいたします。
結論
繰り返しますが、ヒルに血を吸われてもたいした害はありません。パニックになって事故が起こる方がよほど危険です。
ヒルの被害に遭いにくい服装をしてくれば、ヒル除けの薬剤もありますので、当日は落ち着いて行動してください。