大河ドラマ「べらぼう」では、9月になったのに東洲斎写楽のキャストが発表されていません。
ということは、正体が謎とされる写楽はすでに登場している人物のことでは? という推測がなりたつわけです。
私が写楽候補として考えていたのは、「新さん」こと小田新之助、あるいは田沼意次です。
架空の人物である「新さん」は写楽要員としての出演ではないか、一方で田沼意次は失脚後にすぐ死んでしまいますが、本当は生きていて松平定信への復讐として絵を描き始める、という展開を考えていたのです。
でも2人ともドラマから退場してしまいました。
私の周囲では、「恋川春町が写楽ではないか?」と予測している人もいました。
松平定信からの呼び出しを病気を理由に断っていた恋川春町こと倉橋格は、その後急死してしまいます。
本当に病気だったのか、自殺だったのか、死の真相は明らかではありません。
そこで本当は死んでおらず、絵が得意だった春町が写楽になるのではないかという予測でした。
でも春町も9月21日の第36回で退場してしまいました。
ドラマでは自殺説をとっていました。
さて、新宿はかつて内藤新宿という甲州街道の宿場があったことが地名の由来です。
内藤新宿は飯盛女が多く、遊郭化した宿場でした。
江戸では吉原遊廓にしか遊女はいてはいけないことになっていましたが、宿場の衰退を防ぎ、幕府が整備した流通機構を機能させるために、「客に飯をよそう女」という名目、つまり飯盛女として宿場の遊女は幕府から黙認されていたのです。
飯盛女がたくさんいた内藤新宿だから、投げ込み寺もあります。
成覚寺です。
この寺には、子供合埋碑と書かれた供養塔があります。
かつて本堂の裏に内藤新宿の遊女(飯盛女)たちの埋葬所があり、そこに建てられていた供養塔が子供合埋碑なのです。
他にも内藤新宿が遊郭化していた遺跡としては、玉川上水で心中した遊女たちを弔うための旭地蔵もあります。
台石に同じ日付で男女の戒名が書かれています。
もともとはもっと西の玉川上水沿い、現在の新宿三丁目駅の付近にあったものを、区画整理の折に成覚寺に移設したのだそうです。
「べらぼう」の中で自殺してしまった恋川春町ですが、彼のお墓もこの寺にあります。
同じ9月21日の放送では、平秩東作も病死してしまいました。
平秩東作の墓も新宿ちかくにあります。
内藤新宿よりももう少し東、曙橋駅の近くが四ツ谷の寺町です。
この中のお寺の1つに、平秩東作のお墓があるのです。
田沼時代と呼ばれた江戸時代の中期、政策立案・施行の責任者である老中のほかに、側用人や御用取次と呼ばれる役職がありました。
老中や奉行たちの政策案を将軍に取り次ぐ役職ですが、意次の時代には勘定奉行配下の勘定所が大きな権限をもっていました。
勘定所では内部での政策立案だけでなく、町方からの献言も吸い上げて政策を立てていました。
この時代には「山師」と呼ばれる人たちが、幕府に多額の収入があることをプレゼンして、新事業の開発を勘定所を通して幕府にもちかけていました。
その「山師」のひとりが平賀源内であり、平秩東作であったのです。
その平秩東作のお墓が四ツ谷寺町のお寺にあります。
私は東京都文化財ウィークの公開の折に行ったのですが、私にお茶とお菓子を出してくれたお寺の方は「あまり大勢の人に来てほしくはないねえ」とおっしゃってましたので、お寺の名前は伏せておきます。
このときもお寺を訪れていたのは私ひとりでした。
文化財ウィークの冊子に「平秩東作の墓」と書いても彼のことを知っている人は少ないでしょうから、訪れる人も少ないわけです。
大河ドラマに平秩東作が出てきたしまった今、このお寺はどうなっているのでしょうか?
ついでに四ツ谷寺町にはこの人の供養碑もあります。
(本物の墓石は滅失したそうです)
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
【画像出典】
浮世絵:国立国会図書館デジタルコレクション
江戸切絵図:復刻版江戸切絵図©こちずライブラリ
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