歌川広重は保永堂から出版した浮世絵「東海道五拾三次」において、三島宿の絵では三嶋大社の前を描いています。
浮世絵に描かれている三嶋大社の鳥居の現在の様子です。
三嶋大社は伊豆国の一の宮、現在は祭神が大山祇神となっていますが、もともとは伊豆諸島の火山を三嶋明神として祀ったのが始まりとされています。
この三嶋大社の境内に銅像があります。
幕末から明治にかけての三嶋大社の宮司、矢田部盛治です。
矢田部盛治は様々な事跡を残した人物です。
掛川藩太田家の家老橋爪家に生まれ、代々三嶋大社の宮司を務める矢田部家の養子となった盛治は、安政元年(嘉永7年・1854)に発生した大地震で三嶋大社の社殿のほとんど全てが倒壊したとき、当時寺社奉行だった旧主の太田資功に訴えて幕府の援助を得て建て直したのも矢田部盛治とされています。
こうして現在国指定重要文化財になっている本殿をはじめとして、現在も使われている社殿や門などの建築物は慶応2年(1866)から明治元年(1868)にかけて再建されました。
戊辰戦争のときには、三島宿に陣を張った新政府方の旧旗本松下嘉兵衛の兵と、沼津から進軍してきた林忠崇・伊庭八郎たちが率いる遊撃隊が対立したとき、本陣当主の世古六太夫とともに両陣の間をとりもって三島宿での戦闘を回避しました。
ところが遊撃隊が箱根に去った後、世古六太夫は松下家の兵によって「逆賊」として裾野に連れ去られ、危うく首を刎ねられそうになりました。
そのときに松下家に談判に行き、六太夫を救い出してきたのも矢田部盛治です。
明治になると、三島周辺の農業振興のため三嶋大社の社有地を開墾し、その農地に導水する用水路を造りました。
さらに田畑の水源を富士山の湧水に頼っていた三島では、水が冷たく作物の育ちが悪いという悩みがありました。
この問題を解消ために溜池を造り、ここにいったん水をためて太陽光であたためてから田に流すことにしたのも矢田部盛治です。
三島周辺が住宅地になったことでこの溜池「温水池」は農業用水としての役割の度合いは減りましたが、いまでは池の周囲は公園となり、人々の憩いの場となっています。
このように三島宿と周辺地域のために尽力したのが、三嶋大社に銅像のある矢田部盛治なのです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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