髭茶屋追分(山科追分・大津追分)には右が京都、左が伏見へと指し示す道しるべが置かれています。この道しるべについては、先に書きました。
→髭茶屋追分 道しるべの秘密

髭茶屋追分の道しるべ

その横にはもうひとつ道しるべがあります。
そこにはこう書かれています。

もうひとつの道しるべ

「蓮如上人御陵」

道しるべの下の方が埋まっているため、これらの文字の下に「道」と書かれている可能性もあります。
京都市山科区には蓮如上人の墓所があります。
そこへの道を示しているのです。

蓮如上人墓所

蓮如上人は室町時代の人です。
近江と三河を中心に精力的な布教活動を行い、当時は小教団に過ぎなかった本願寺教団を巨大教団に育て上げた僧侶です。

よく知られているとおり、本願寺教団は蓮如上人の子孫の代には戦国大名たちと肩を並べるような軍閥になり、織田信長とも激しい抗争を繰り返しました。
彼に軍閥化の意図があったとは思えませんが、そこまでの勢力を持つ基を築いたのが蓮如上人なのです。

山科の西宗寺にある蓮如上人像

ちなみに史上初の一向一揆は延暦寺の迫害を受けた蓮如上人を守るために、金ヶ森の水郷集落(滋賀県守山市)の住民が武器をもって蜂起したことですが、蓮如上人本人は武力抗争をやめるように呼びかけています。

最近は「東海道五十七次」と呼ばれることが多くなった京街道(伏見街道・奈良街道)ですが、京都へと向かう東海道から分かれた先で、さらに蓮如上人の墓所のある山科本願寺の跡へとつづく道が分かれているのです。

髭茶屋追分から左の道へ進むと、このような場所に出ます。

蓮如上人墓所への分かれ道

小さな十字路ですが、ここが蓮如上人墓所への道が分かれていた場所です。
正面の道が伏見を経て大阪へと向かう京街道、左が牛尾観音と呼ばれる法厳寺へと向かう牛尾山道、右が蓮如上人の墓所のある山科本願寺跡へと向かう道です。

牛尾山道の道しるべ

牛尾観音への道の入口には「牛尾山道」の道しるべが建っています。
蓮如上人墓所への道の入口にも道しるべがあったのですが移設されてしまい、現在は道しるべはありません。

蓮如上人墓所への道

この道を500メートルほど進んだところに光照寺というお寺があります。
ここは隠居後の蓮如上人が住んでいた山科本願寺の南殿があった場所で、光照寺では蓮如上人は南殿で入寂したと伝わっています。

光照寺

蓮如上人の死後に起こった天文法華の乱によって山科本願寺が破却されたときに、南殿も破壊されてしまいました。
その跡地に建てられたお寺です。

お寺の裏には今も山科本願寺の土塁が残っています。

山科本願寺の土塁

なお、蓮如上人の入寂地については、山科本願寺内の西宗寺という説もあります。

光照寺の前に道しるべがあります。
「蓮如上人御塚道」「是より五町」などと書かれています。
この道しるべがもともとはさきほどの「牛尾山道」の道しるべの向かいにあったもので、京街道から蓮如上人の墓所への道が分かれる場所に建っていたのを移設したものなのです。

移設された道しるべ

平成7年発行の本に昭和57年撮影の写真とともに元の場所に建っている様子が掲載されていますので、その後移設されたようです。

蓮如上人墓所への道

さらに道を進みます。
スーパーのフレスコ(ユタカドラッグと看板にありますが、入ってみると完全にスーパーマーケットです)の前をすぎてしばらくすると、本願寺山科別院があります。
山科本願寺の跡地に浄土真宗本願寺派(いわゆる西本願寺)が建てたお寺です。

本願寺山科別院

この山門の正面からつづく道を進んだところが、蓮如上人の墓所です。

蓮如上人墓所

京街道からの分かれ道、「蓮如上人御塚道」の道しるべがもともとあった場所から約1.3キロです。
「是より五町」より倍くらいの距離があります。
昔の道しるべの距離って、けっこういい加減なんですね。

髭茶屋追分にあった「蓮如上人御陵」の道しるべは、ここへと至る道を示したものだったのです。

   

(歩き旅応援舎代表 岡本永義)

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    2026年
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    月に1回日帰りで歩く東海道五十三次の旅。4月までは比較的短い距離をライトに歩きます。
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