東海道を歩いていると、琵琶湖の東岸にある三角形の山が見えてきます。
滋賀県野洲市にある三上山です。
その形から「近江富士」とも呼ばれています。
この山には大きなムカデが生息していることで知られています。
大きいといっても、10センチとか20センチとかそんなもんじゃありませんよ。
なんとこの山を7周半するくらいの長さがあるのです。
しかも琵琶湖から南に流れ出ている瀬田川に現れて、人々の生活を脅かしたというのです。
オオムカデのために苦しめられたのは瀬田川に住む竜王も同じで、藤原秀郷に頼んでオオムカデを退治してもらいました。
こうして瀬田には平穏が訪れたのですが、オオムカデ、竜王、藤原秀郷の三者のうち、実在の人物は藤原秀郷だけです。
瀬田には瀬田の唐橋がかかり、東海道が通っています。
交通の要衝です。
そして藤原秀郷は平将門の乱を鎮圧した人物として知られています。
つまりこの伝説は、京都側から平将門について見たものがもとになっているのです。
天慶2年(939)、関東で平将門の朝廷に対して反旗を翻します。
将門は関八州の国府を襲い、朝廷が派遣した国司たちを追放してしまったのです。
これを知った京都の朝廷は大慌て!
朝廷の中枢にいるお公家さんたちは京都から出たことがない人がほとんどですから、関東がどれだけ遠いか知りません。
だから明日にでも将門が京都に攻めてくるのではないかとビビりまくったのです。
ところが平将門は、翌年に藤原秀郷らに敗れて戦死しました。
京都を脅かした「逆賊」平将門は、「忠臣」藤原秀郷によって退治されました。
このことが藤原秀郷のオオムカデ退治の物語の原型と考えられるのです。
平将門は、京都の人たちからみたらムカデの化け物なんですね。
将門は全身が鉄でできているので矢で射られても死なないとか、本当に化け物扱いをされていたようです。
でも関東の人たちから見たら守り神です。
京都の朝廷や公家たちによる搾取に立ち向かった人物です。
だから神田明神にまつられる神様になったのです。
同じ人物の評価でも、立場によってこんなにちがうのですね。
ちなみに掛川市内の東海道沿いには、平将門の首塚と伝わる十九首塚があります。
ここは藤原秀郷が京都への凱旋途中で京都から来た朝廷の使者と会い、将門とその兄弟や郎党19人の首実検をしてから埋葬したという話があります。
東京と京都の間にある掛川では、神様でも化け物でもない普通の武将としての平将門の物語となっています。
掛川の話も伝承にすぎないのですが、将門の評価は場所によってこんなに異なるのです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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