徳川家康はその幼少時代、まだ竹千代だったころに尾張に割拠した織田氏の人質となっていたことがあります。
以前は今川への人質に行く途中に織田方に奪われて人質になったといわれていましたが、近年は織田信秀の攻撃に屈服した松平広忠が、我が子竹千代を信秀へと人質に差し出したという説が提唱されています。
松平広忠の死後、今川軍の攻撃で捕虜となった信秀の子の信広との人質交換が天文18年(1549)に行われ、竹千代はその後19歳まで駿府の今川義元のもとで過ごすこととなりました。
人質交換の場所は笠寺だったとされています。
笠寺は名古屋市南区の東海道沿いにあるお寺です。
上の写真の人質交換の碑も、笠寺の境内にあります。
それでは竹千代は、織田の人質時代にはどこに住んでいたのでしょう?
実は竹千代が住んでいた場所も、東海道沿いだったのです。
その場所とは熱田宿です。
江戸時代に東海道41番目の宿場、通称宮宿(みやのしゅく)と呼ばれるようになる場所です。
ここには大きな港がありました。
熱田湊です。
この湊を支配していたのは加藤氏でした。
加藤氏は熱田湊の支配で莫大な利益をあげていた豪商と言われることが多いのですが、戦国時代の豪商でしたら武力は有していたでしょうし、実際に加藤家の次男だった加藤弥三郎は織田信長に仕えていますので、加藤氏も武装商人だったとも考えてられます。
織田信秀とその子信長の時代の加藤家の当主は加藤順盛でした。
加藤図書助と呼ばれることが多いです。
この加藤順盛の屋敷に竹千代は預けられていたのです。
これは明治26年(1893)の地図ですが、海の埋め立てが進むかつての海岸線沿いに、出島のような四角い区画があります。
ここが加藤家の屋敷です。
江戸時代の絵図にも同じような屋敷が描いてあります。
この屋敷は「羽城」と呼ばれていて、文字通り周囲を海と堀で囲まれた城のような屋敷でした。
この屋敷の中に竹千代は住んでいたのです。
いまから10年くらい前までは、周囲はすっかり埋め立てられて住宅地になっていたものの、長大な塀にかこまれた加藤家のお屋敷はありました。
塀越しに「徳川家康幼時幽居の地」と書かれた説明看板も設置してありました。
残念ながら加藤家は他所に移転したらしく、現在その跡地には戸建て住宅が並んでいます。
一時期置かれていた説明看板も、今では撤去されています。
その説明板、どこへ行ったのかと思ったら、近くの公園に移設されていました。
公園の名前は羽城公園。
加藤図書助の屋敷の名前が公園名になっています。
東海道を東へ東へと進むようにして天下人への道を歩んだ徳川家康は、幼少時も東海道沿いで過ごしていたのです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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