四日市宿から東海道を歩いて約5キロのところに、日永追分があります。
ここは東海道から伊勢神宮へといたる伊勢参宮道が分かれるところ、右が東海道で左が伊勢参宮道です。
分かれ道ですから、道標があります。
現在置かれているものは、江戸時代も終わり近い嘉永2年(1849)に設置されたものです。
この道標を寄進したのは、桑名宿の魚問屋尾張屋文助です。
この人は北から桑名宿の七里渡しへと通じる美濃道に「すてんしょみち」と彫られた道標も建てた人です。
桑名駅から七里渡しへと向かう古道にあったのですが、残念ながらこの道標は家屋の新築にともなって現在は撤去されています。
「すてんしょ」とはステーション、つまり桑名駅のことです。
桑名駅が開業したのが明治28年(1895)ですから、それ以降にもともとあった道標に刻まれた文字です。
日永追分の道標に話は戻ります。
嘉永2年はこの4年後にペリーによる黒船来航があった時代です。
だから江戸時代の道標としては比較的新しいものになります。
ということは、現在日永追分にある道標以前に、先代の道標があったのです。
その道標も残っています。
しかも東海道沿いに移設されて保存されているのです。
以前の道標がある場所は、日永追分から約1.5キロ北にある日永神社の境内です。
この道標が造られたのは明暦2年(1656)、この翌年には江戸で明暦の大火が起こって江戸城の天守閣が焼け落ちた、そんな時代です。
東海道に残っている道標では、一番古いものといわれています。
建てたのは「専心」という名のお坊さんです。
道標に名前が刻まれていますが、このお坊さんの詳細は不明です。
伊勢神宮という日本の神社の頂点にある神社へ向かう道への道標を、仏教の僧侶が建てているのです。
江戸時代までは仏教も神道も混ぜこぜで信仰する神仏習合が一般的でした。
古いだけではなく、かつての日本の信仰形態も伝えている貴重な道標です。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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