江戸時代前期の天和元年(1682)、それまで将軍が上洛するときに使っていた水口の御殿が水口城となり、加藤明友がここに封じられて水口藩が成立しました。
加藤明友は賤ヶ岳の七本槍のひとり、加藤嘉明の孫にあたります。
水口藩は2万石、その領地の境目である東海道の西と東には石製の領界標が設置されていました。
江戸時代の領界標は四角柱の形をしていることが多く、そのため傍示杭、とくに石製のものは傍示石と呼ばれることが多かったのです。
水口藩の領界標である西の傍示石があったのは野洲川にあった横田の渡し場でした。
現在は甲賀市立図書館の敷地に移されています。
それに対して東の境にあった傍示石は、今は両方とも甲賀市になってしまいましたが、かつての土山町と水口町の境(現在の大野西交差点付近)の稲川のほとりにありました。
これらの領界標に書かれている「従是西水口領」などの文字を書いたのは、水口藩士の中でも能書家として知られていた藩医の岩谷景雲でした。
その文字は東海道を通った朝鮮通信使が見て「いまだかつてかくの如き超絶なる筆跡を知らず」と褒め称えたそうです。
ただしこの話は水口に伝わる口伝に過ぎませんので、多分に話を盛ってある可能性大です。
その「超絶の文字」の領界標、医師製なので傍示石ともいいますが、現在も残っています。
場所は加藤明友が加藤嘉明を祭神として創建した藤榮神社です。
ちなみに藤榮神社の社号塔の文字は水口藩出身で明治政府で書記を務めていた書家の巌谷一六が書いたものです。
巌谷一六は岩谷景雲よりも後の時代の人ですが、同じ一族だったと推定されています。
巌谷一六も水口藩の藩医だったこと、「巌谷」の姓の文字は東京に行く前は「岩谷」だったことなどがその理由です。
ところで、この藤榮神社の社号塔を反対側から見てみると・・・
なんと裏側に「従此川中西水口領」と書いてあるではありませんか!
これこそが水口藩領の東の境の東海道に建てられていたものなのです。
明治の世となり、藩領境の傍示石が不要になったことから藤榮神社の社号塔としてリサイクルされていたのです。
水口宿を訪れた際は、ぜひとも藤榮神社に立ち寄って、この「超絶の文字」をごらんになってください。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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