戦国時代に一柳直末という武将がいました。
箱根西坂の山中城跡にある宗閑寺に墓が建っています。
「寛政重修諸家譜」によると、直末の先祖は瀬戸内の水軍として知られる河野氏で、曾祖父が戦死したことから祖父が美濃に移住して一柳を名乗るようになり、だいたい岐阜市の南部付近で生まれた直末は豊臣秀吉に仕えました。
直末が秀吉に仕えたのは元亀元年(1570)のこと。
秀吉がまだ織田信長の家臣だったころです。
この年は何があったのかというと、織田信長と朝倉義景の関係が悪化し、浅井長政が信長を裏切り、6月の姉川合戦で信長は朝倉・浅井連合軍を破ったものの、9月には石山合戦が起こって、信長と本願寺教団との間で泥沼の戦いは始まった年です。
この3年後に信長が足利義昭を追放して室町幕府が滅びるまで、信長にとって最大の苦難がつづいたころにあたります。
秀吉も信長にしたがって合戦に明け暮れていました。
「寛政重修諸家譜」には「しばしば戦功をあらわす」と曖昧な書き方をしていますが、直末は秀吉にしたがって戦場で名を挙げ、秀吉が太閤となった天正13年(1585)には6万石の大名となりました。
ちなみにこのときの領地は美濃国内だったらしいのですが、どこだったのかはっきりしません。
そして天正18年(1590)、豊臣秀吉は小田原の北条氏への攻撃を開始し、3月28日には箱根西坂の山中城の攻防戦が起こりました。
このとき一柳直末は豊臣軍の先鋒として山中城の大手門に攻めかかったのですが、鉄砲で撃たれて戦死してしまいました。
直末の遺体は、その家臣によって首が切り落とされ、その首は戦場から離脱されました。
敵に首を取られないためです。
その首は現在の長泉町の黄瀬川沿いに埋葬されました。
その場所と伝わる首塚が残っています。
合戦の終了後、一柳直末の胴体は回収され、江戸時代に笹原新田ができる場所に埋葬され、墓石と一柳院という寺が建てられました。
直末が戦死した一柳家は、その弟の直盛が跡を継ぎ、江戸時代にはその子孫が播磨小野藩1万石となりました。
5代将軍徳川綱吉のころの小野藩主は一柳末礼でした。
かれは箱根の東海道を越えて笹原新田を通ったとき、道沿いに茶店が並んでいたために、戦死した偉大な先祖の墓が見えなくなってしまったことを知りました。
これを残念に思った末礼は、宗閑寺の境内に直末の墓を建て直したのです。
こうして山中城で戦死した一柳直末の墓は、3箇所存在することとなりました。
ちなみに東海道沿いの宗閑寺そばの山中城跡への入口に立っている「史蹟山中城趾記念之碑」も、直末の子孫の一柳直吉が昭和5年(1930)に建てたものです。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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