歌川広重は浮世絵「東海道五拾三次」の中で、蒲原宿に雪がつもる様子を描いています。

昭和35年(1960)に国際文通週間の記念切手にもなった有名な絵です。
蒲原宿内には切手の図柄になったことを記念した碑も建てられています。


ところで静岡市清水区の東端にあたる蒲原は海に面した温暖な地で、雪が降ることはめったにありません。
降ったとしてもちらほらと舞うだけで、地面が白くなることもまずありません。
そのため「蒲原夜之雪」の絵は広重が想像で描いたもので、広重は東海道蒲原宿に行ったことはない、歌川広重は東海道を歩いたことがないという説の有力な根拠のひとつとされてきました。
ところが、実はそうとは言い切れないのです。
江戸時代後期の蒲原宿において問屋職を務めていた渡辺金璙は、多年にわたる日記「生涯略記」を残しています。

渡辺家の人々は現在も蒲原宿の江戸時代から変わらぬ場所に住んでおり、その家にある蔵は江戸時代の後期、天保10年(1839)に建てられたもので、内部には当時を知る貴重な文物が多数所蔵されています。
渡辺金瞭の日記もそのひとつです。
その渡辺金瞭の日記には、雪が降って積もった記述が複数あるのです。
つまり江戸時代後期の蒲原宿はいまほど温暖ではなく、雪が積もる程度の雪は降っていたのです。
ほぼ同じ時代を生きた広重が描いた浮世絵に描かれている雪は、けっして虚構とは言い切れないのです。
これだけで広重が東海道を旅したことがある証拠にはなりませんが、広重の描いた「蒲原夜之雪」は必ずしも広重の想像の産物とはいえないのです。
(蒲原夜の雪の碑)
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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