2024.9.16
保土ケ谷宿の上方見附跡を出て戸塚宿方向へしばらく行くと上り坂があります。
権太坂です。
権太坂では坂の途中の宅地開発の際に多数の古い人骨が出土し、権太坂の傾斜のきびしさに行き倒れた人々を埋葬したのではないかといわれています。
こういった他の土地から来た人たちを埋葬した穴のことを「投げ込み塚」とか「投げ込み穴」と呼びます。
権太坂の場合は「投げ込み塚」と呼ばれていて、坂を上って左に進んだところには投込塚跡の碑があり、この坂で埋葬された人たちを供養しています。
宿場のすぐ外に埋葬地があったのは他の宿場にも同様の例があり、例えば川崎宿では京側土居の外からはじまる八丁畷で、江尻宿では江戸口見附の外にあった細井の松原において、それぞれ古い人骨が多数発見されています。
資料館などで江戸時代の道中手形を展示してあるところがありますが、手形の文言を読むと「客死した場合にはその地の作法にしたがって埋葬されたい。連絡無用」などと書いてあります。
→往来手形 江戸時代の旅の必需品のとんでもない内容
当時は今ほど衛生状態・栄養状態も良くないし、社会インフラも充実していませんでした。旅先で体調を崩して死に至ったばあいは、このように客死先で埋葬することが多かったようです。
こうして埋葬された人たちは近くに縁者もおらず、その後供養する人がいないことがほとんどです。
そのため無縁仏として扱われることになります。
川崎宿や江尻宿の例や手形の文言などから総合的に考えると、権太坂の投込塚はガイドブックなどに載っているように坂道で行き倒れた人ばかりではなく、保土ケ谷宿で病死などをした人たちも埋葬されていた可能性があります。
ところで保土ケ谷宿には、西側にある権太坂の投げ込み塚とは別に、東側の宿場の外にも投げ込み穴があったという話があります。
八王子道の追分から始まる保土ケ谷の古道(現在の道筋になる前の東海道)と国道16号が交差するところに、延命地蔵尊堂があります。
保土ケ谷宿の中にある香象院が管理している地蔵堂です。
もともとは山下阿弥陀堂という御堂があったらしいのですが、明治以降に廃寺になってしまい、いまは戦争で焼けた3体のお地蔵さんを祀るための屋根がある程度の質素な地蔵堂が建てられています。
これら3体のお地蔵さんは、もともと八王子道の追分にあったものだという話もあります。
この地蔵堂の裏の小山は墓地になっており、その中に下の方が埋もれた三界萬霊塔があります。
大正3年(1914)に香象院の住職が建てたものです。
この三界萬霊塔は投げ込み穴の跡だという記述が「横浜市文化財調査報告書」の第6輯と別輯にあるのです。
詳細がよくわからない「投げ込み穴」なのですが、慶安元年(1624)ころまでは保土ケ谷宿は地蔵堂前の古道にありました(古町)から、もしかしたら保土ケ谷宿が移転前の投げ込み塚だったのかも知れません。
また、保土ケ谷宿が移転後も、宿内で客死した人たちはここまで運ばれて埋葬されていた可能性もありそうです。
保土ケ谷宿は江戸から比較的近い宿場ですが、それでも宿場の両側に投げ込み塚(穴)があったということは、当時の旅行が今とは比べものにならないくらい危険と隣り合わせだったことがわかります。
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
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