歌川広重「東海道五十三次之内 小田原酒匂川」

東海道五十三次の小田原宿の東に、大きな川があります。酒匂川です。
現在の酒匂橋のある場所よりも、ほんのちょっと上流に江戸時代の渡し場がありました。
歌川広重の浮世絵にも、酒匂川の渡し場の様子が描かれています。

酒匂川に架かる酒匂橋

この酒匂川には東海道にかかわるいろいろな人の物語が伝わっています。

たとえばヤマトタケル(日本武尊)。
酒匂川の名称の由来として、ヤマトタケルが東征の折に戦勝を祈願して、川の神に奉納するために上流から神酒を流し、その匂いがいつまでもつづいたからというものがあります。

ヤマトタケル 大津市建部大社にて撮影

ただこの話は「古事記」にも「日本書紀」にも載っていない小田原の伝承にすぎません。本当の地名由来は、もともとは川が大きく曲がって(勾って)いたことから本来は「酒勾」と書いていたのが転じたもの、あるいは満潮で川が逆流するので「逆川」が転じたものという説が有力です。

東海道には「古事記」「日本書紀」に記述のあるなしを問わず、ヤマトタケルが由来となったと伝わる地名がたくさんあります。
そのほとんどすべては創作なのでしょうが、本当の由来よりもヤマトタケル絡みの方が面白いのは間違いないと思います。

富士山と宝永火口(右下)

宝永4年(1707)、富士山が大噴火しました。
今も富士山の山腹にその噴火の跡が残っている、宝永の大噴火です。
酒匂川にも大量の火山灰が降り注ぎ、それが原因で大洪水を起きています。

そのときに幕府の命を受けて酒匂川を浚渫して堤を築いたのが、川崎宿の本陣当主から旗本に取り立てられた田中休愚でした。
田中休愚は本陣職を隠居した後に「民間省要」を著して農村の窮状を訴えて幕政を批判し、これを読んだ8代将軍徳川吉宗によって旗本に登用されました。
宝永の大噴火ころには川除御普請御用という役職に就き、多摩川や二ヶ領・六郷用水の治水工事や修復を行っていました。

川崎宿田中本陣跡の説明板にある田中休愚肖像

酒匂川の治水工事を担った田中休愚ですが、ただし彼が堤を築いたのはずっと上流の現在の山北町です。
そのときの堤と休愚が自ら建てた碑が残っています。

二宮金治郎表彰の地の碑

酒匂川の西岸には二宮金治郎表彰の地の碑があります。
二宮金治郎(のち金次郎・尊徳)は若きころ、大坂城代から老中になるために東海道を下っていた小田原藩主大久保忠真が、途中で領民たちの表彰を酒匂川のほとりでおこなったときに、表彰を受けた一人でした。

再建資金を貸し付けるとともに経営に関する助言を行い、農家や農村、武家を経済的に再建しました。
のちに金次郎はその手腕を見込まれて大久保忠真から大久保一族の旗本宇津家の桜町領の財政再建を依頼されたのを皮切りに、忠真の後ろ盾で多くの再建事業を行いました。

二宮尊徳 報徳博物館の像

酒匂川の河岸に碑がある表彰は、金次郎が忠真に登用される3年前のできごとです。

ところで酒匂川には人ではありませんが、このようなものも関わっています。

シカに注意

シカに注意の標識? まさかシカがいるわけ・・・

えっっっ?!

酒匂川の河原

酒匂川はけっこう自然が豊かでして、私はカワセミも見たことがあります。

酒匂橋の上から撮影

もっともカワセミは「清流の宝石」などと呼ばれておりますが、エサとなる小魚がとれる場所ならば町中の普通の川にも住んでいます。
23区ないの運河にだって住んでいます。
けっして清流だけに住んでいるわけではありません。

酒匂川

酒匂川はいろいろな人たちのゆかりの地で、自然も豊かな場所です。
橋から水面や河原を見下ろすと、動物たちに出会えるかも知れません。

   

(歩き旅応援舎代表 岡本永義)

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