2024.3.11
今月の「京都まであるく東海道」では東静岡駅前から岡部宿まであるきました。
岡部宿には江戸時代に旅籠だった家屋が現存しています。平成12年(2000)からは藤枝市の施設「大旅籠柏屋」として公開されています。

平成6年まで所有者が住んでいたこともあり、内部は現代風に改装されていたそうなのですが、それを江戸時代の旅籠の状態に復元し、さらに屋根裏に展示室を設けるなどして、現在は歴史資料館となっています。

そこに宿場での食事に関する展示がありました。

これは大坂の豪商升屋が文化10年(1813)1月に仙台に向かったときの様子を記した「升屋平右衛門仙台下向日記」をもとに作成した各宿場での食事の一覧表です。当時の升屋には山片蟠桃というスゴ腕の番頭がいて、そのため仙台藩伊達家は升屋を蔵元(年貢米の売買を担う商人)にして藩財政に深く関わらせていました。
その旅において主人の平右衛門が記したのが「下向日記」です。平右衛門はマメな性格だったらしく、途中で泊まった宿で出た食事がなんだったか、皿ひとつごとに日記に記しているのです。
この一覧表の中で気になる記述を見つけました。
26日 朝 袋井 (略) ふわふわ玉子

ん? 袋井宿のたまご料理なら「たまごふわふわ」では?
袋井市観光協会は、江戸時代の文献の記述をもとに、袋井宿で朝食に出されていたという「たまごふわふわ」を復元し、町おこしに活用しています。東海道を歩いていると、袋井宿周辺で「たまごふわふわ」についてよく目にするところです。

「ふわふわ玉子ではなく、玉子ふわふわでは?」
この疑問を大旅籠柏屋のガイドさんに質問したところ「ご自分で原典をしらべてください♪」とのことでした。
そこで原典である「升屋平右衛門仙台下向日記」に当たってみました。
インターネットで検索すると、はたして袋井市のホームページに日記に関する記述がありました。
この日記は升屋の子孫の山片家の個人所有のようなのですが、出版物としては「日本都市生活史料集成8 宿場町篇」という書籍に掲載されていました。50年くらい前の本ですが、図書館で読むことができます。
また、袋井市のホームページをはじめとして、原点のこの部分だけ写真を掲載しているサイトが複数存在していますし、袋井市観光協会発行のパンフレットにも載っています。


活字に直したものを上に載せました。な~んだ、やっぱり「玉子ふわふわ(たまごふわふわ)」、玉子が先じゃん。
と思ったら、秋田県公文書館が発行している「古文書倶楽部」にも「たまごふわふわ」に関する記述があることがわかりました。
そこには『古文書こぼればなし 玉子ふわふわ ~「宇都宮孟綱旅中日記」から~』と題する記事があり、そこに
「玉子ふわふわ(鶏卵浮々煮)は、ふわふわ玉子ともいわれます。」
と書いてあります。
なんと、料理の呼び名については、「玉子ふわふわ」でも「ふわふわ玉子」でも、玉子が前でも後でも良いようなのです。
でもこの記事をよく読むと、料理の呼び名よりももっと気になることが書いてあります。ふわふわ玉子を食べたと日記に記されているのは『三月二十八日(古河駅・朝食)』。
え?
たまごふわふわって、
袋井の郷土料理じゃないの???
(歩き旅応援舎代表 岡本永義)
参考文献
日本都市生活史料集成8 宿場町篇「升屋平右衛門山片重芳の文化十年仙台下向日記」
袋井市ホームページ 袋井宿「たまごふわふわ」
袋井市観光協会発行パンフレット「江戸時代の名物料理 袋井宿たまごふわふわ」
秋田県公文書館発行「古文書倶楽部 2012.11 第50号」
最新のブログ記事
- 和中散本舗 大森や梅屋敷で売られていた道中薬大森と蒲田には「和中散」という薬を売る店がありました。この和中散は、石部宿と草津宿の間で造られていた薬です。製造していた店は今も残っています。
- 東海道五十三次の旅 富士絶景ベスト3東海道五十三次の歩き旅では、特に静岡県東部を中心に富士山がよく見えます。これまでの旅の中で撮影した富士山の写真から、ベスト3を選びました。
- 蔦重と京伝の処罰 北町奉行所はどこにあった?大河ドラマ「べらぼう」第39回では蔦屋重三郎と山東京伝が処罰をされる場面が出てきました。このとき2人が拘束された小伝馬町の牢屋敷と北町奉行所はどこにあったのでしょう?
- 水口藩傍示石 領界標がリサイクルされた先とは?江戸時代には各大名家は自分の藩の領地の外れに領界標を建てていました。水口藩も東海道沿いに石製の領界標、傍示石を建てていました。その傍示石があるところでリサイクルされているのです。
- 歌川広重の「石部宿」 モデルとなった茶屋はどこ?東海道の石部宿に行くと、歌川広重が浮世絵に描いたのとよく似た建物が建てられています。でも、広重の浮世絵の舞台となった場所は実は・・・
東海道歩き旅イベント 参加者募集中
とにかく内容が濃く詳しい、それなのに参加費がリーズナブル。
それが歩き旅応援舎の東海道歩き旅イベントです。
「日帰りで歩く東海道」 日本橋~原宿を日帰りで歩きます。全15回
「京都まで歩く東海道」 原宿~三条大橋を一泊二日で歩きます。全18回
それぞれ月に1回ずつ歩いて、東京の日本橋から京都の三条大橋をめざすイベントです。
以下のイベントが参加者募集中です。途中からでもご参加いただけます。
このブログには書いていないことが、実際の東海道にはいっぱいあります。
もっとくわしくお話をしながらガイドがご案内いたします。
一緒に東海道を歩きませんか?
人生の宝となるような経験、そのためのお手伝いをいたします。
- 京都まであるく東海道 第6期 蒲原宿~岡部宿月に1回、一泊二日で歩く東海道五十三次の旅
開催日時
2025年
10月25~26日 原宿~蒲原宿【受付終了】
11月22~23日 蒲原宿~東静岡
12月27~28日 東静岡~岡部宿
参加費 各回5000円 - 日帰りであるく東海道Light 第1期 新橋~品川宿月に1回日帰りで歩く東海道五十三次の旅。まずは体を馴らすために短めの距離からライトに始めます。
開催日時
2025年
11月5日 日本橋~新橋【受付終了】
12月3日 新橋~高輪
2026年1月7日 高輪~品川宿
参加費 各回3000円 - 日帰りであるく東海道 第1期 蒲田~生麦月に1回日帰りで歩く東海道五十三次の旅
開催日時
2025年
10月4日 日本橋~品川宿【受付終了】
11月1日 品川宿~蒲田【受付終了】
12月6日 蒲田~生麦
参加費 各回3500円 - 京都まであるく東海道 第11期 石山~三条大橋月に1回、一泊二日で歩く東海道五十三次の旅 最終章
開催日時
2025年
9月27~28日 土山宿~石部宿【受付終了】
11月1~2日 石部宿~石山【受付終了】
12月6~7日 石山~三条大橋
参加費 各回6500円 - 日帰りであるく東海道 第2期 保土ケ谷宿~藤沢宿月に1回、日帰りで歩く東海道五十三次の旅
開催日時
2025年
10月12日 生麦~保土ケ谷宿【受付終了】
11月9日 保土ケ谷宿~戸塚宿【受付終了】
12月14日 戸塚宿~藤沢宿
参加費 各回3500円 - 日帰りであるく東海道 第3期 大磯宿~国府津月に1回、日帰りで歩く東海道五十三次の旅
開催日時
10月18日9:00~16:30ころ【受付終了】
11月15日9:00~16:30ころ【受付終了】
12月20日9:00~16:30ころ
参加費 各回3500円












